上級マクロ経済学
補論 微分と積分の復習
1 微分
平均変化率と傾き
関数f(x)が与えられた時、x= x_0からx=x_1における関数f(x)の平均変化率は、 \frac{f(x_1)-f(x_0)}{x_1-x_0} と書くことができる。
いくつもの平均変化率
いま、f(x)=x^2におけるいくつかの平均変化率を求めてみよう。 例えば、x_0=1、x_1=2とすると、 \frac{f(2)-f(1)}{2-1} = \frac{2^2 - 1^2}{1} = 3 また、x_0=2、x_1=3とすると、 \frac{f(3)-f(2)}{3-2} = \frac{3^2 - 2^2}{1} = 5 このように、xの差x_1 - x_0を同じようにとっても、平均変化率は異なりうることがわかる。
平均変化率から微分へ
平均変化率を求める際の、x_0,x_1について、 \Delta x_0 \equiv x_1 - x_0 と定義する。 これを用いて、先の定義式を書き換えると、 \frac{f(x_0 + \Delta x_0) - f(x_0)}{\Delta x_0}
\Delta x_0 \to 0の時、この直線は関数f(x)とx=x_0の1点で接するとみなせる。
これを、関数f(x)のx=x_0における 接線という。
微分係数
接線の傾きは、平均変化率において、\Delta x_0 \to 0としたものなので、 \lim_{\Delta x_0 \to 0} \frac{f(x_0+\Delta x_0) - f(x_0)}{\Delta x_0} と書ける。 これを関数f(x)のx=x_0における微分係数と呼び、 f'(x_0) \equiv \lim_{\Delta x_0 \to 0} \frac{f(x_0+\Delta x_0) - f(x_0)}{\Delta x_0} と定義する。
導関数
x_0はどの点でも取れるので、一般にxに置き換えられる。 ゆえに、この対応関係は関数とみることができる。
このように、f'(x)をxの関数として見たものを関数f(x)の導関数という。 当然導関数も f'(x) \equiv \lim_{\Delta x \to 0} \frac{f(x+\Delta x) - f(x)}{\Delta x} と定義される。
関数f(x)からその導関数f'(x)を求める作業をf(x)を微分するという。
- 実用上は導関数を求める公式が存在するため、普通は公式を用いて微分演算を行う。
微分の表現
f(x)の微分の表し方はいくつかあり、 f'(x), \hspace{12pt} \frac{d}{dx} f(x), ~ \frac{d f(x)}{dx}, ~ \frac{d f}{dx} (x), ~ (f(x))' などが代表的である。
x^aの微分
もっとも有名なx^aの微分は、次のように公式が与えられている。 (x^a)' = a x^{a-1} ここで、aは実数である。
線形性
微分の演算は、線形性と呼ばれる次の性質が成り立つ。 \begin{aligned} (f(x) + f(y))' &= f'(x) + f'(y), \\ f'(\lambda x) &= \lambda f'(x). \end{aligned}
合成関数の微分
合成関数とは、 f(g(x)) のように、関数の変数としてさらに関数が入っているようなものであった。
例はこちら
例えば、 f(x) = (x-2)^2 という関数は、 g(x) = x-2、h(y) = y^2としたとき、 \begin{aligned} f(x) &= (x-2)^2 \\ &= \{g(x)\}^2 \\ &= y^2 \hspace{12pt} (y \equiv g(x)) \\ &= h(y) \\ &= h(g(x)) \hspace{12pt} (\because y=g(x)) \end{aligned} という合成関数と見ることができる。
合成関数を微分する際には、次の微分の公式を使うことができる。 \{ f(g(x)) \}' = g'(x)f'(g(x))
微分の例はこちら
f(x) = (x-2)^2を微分するとしよう。 f(x)=h(g(x))とみると、 g'(x) = 1, \hspace{12pt} h'(y) = 2y なので、これらを用いて、 \begin{aligned} f'(x) &= \{ h(g(x)) \} \\ &= g'(x) h'(g(x)) \\ &= 1 \times h'(x-2) \\ &= 2(x-2) \end{aligned}
積の微分、商の微分
関数が積の形で表されている場合、次の積の微分公式を用いることができる。 \{ f(x) g(x) \}' =f'(x) g(x) + f(x) g'(x)
積の微分の例
例えば、 f(x) = (x+ 3)(x-2) を微分してみよう。いま、g(x)=x+3、h(x)=x-2とすると、 f(x) = g(x) h(x) と書けるので、 g'(x) = 1, \hspace{12pt} h'(x) = 1, を用いて、 \begin{align*} f'(x) &= \{g(x) h(x)\} \\ &= g'(x) h(x) + g(x) h'(x) \\ &= 1 \times (x-2) + (x+3) \times 1 \\ &= 2x + 1 \end{align*} と解を得ることができる。
商の形で表される関数、つまり \frac{f(x)}{g(x)} \hspace{12pt} (g(x) \neq 0) となっているような関数を微分すると、 \left[ \frac{f(x)}{g(x)} \right]' = \frac{f'(x) g(x) - f(x) g'(x)}{\{ g(x) \}^2} となる。
商の微分公式の導出
\frac{f(x)}{g(x)} = f(x) \{g(x)\}^{-1} と見ることができる。 すると、h(y) = y^{-1}と見て、 \frac{f(x)}{g(x)} = f(x) \{g(x)\}^{-1} = f(x) h(g(x)) とすることができる。 今この関数を積の微分と合成関数の微分を用いて微分をすると、 \begin{aligned} \left[ \frac{f(x)}{g(x)} \right]' &= \left[ f(x) \{ g(x) \}^{-1} \right]' \\ &= \left[ f(x) h(g(x)) \right]' \\ &= f'(x) h(g(x)) + f(x) \left\{ h(g(x)) \right\}' \\ &= f'(x) h(g(x)) + f(x) \left\{ g'(x) h'(g(x)) \right\} \\ &= f'(x) h(g(x)) + f(x) \left[ g'(x) (-1 \times \{ g(x) \}^{-2}) \right] \hspace{12pt} (\because h'(y) = - y^{-2}) \\ &= \frac{f'(x)}{g(x)} - f(x) g'(x) \{g(x)\}^{-2} \\ &= \frac{f'(x)}{g(x)} - \frac{f(x) g'(x)}{\{g(x)\}^{-2}} \\ \therefore \left[ \frac{f(x)}{g(x)} \right]' &= \frac{f'(x) g(x) - f(x) g'(x)}{\{ g(x) \}^2} \end{aligned} と計算でき、商の微分公式を得ることができる。
指数関数の微分
指数関数とは、 f(x) = a^x の形で与えられる関数である。 この指数関数の導関数は次のように与えられる。 f'(x) = a^x \log a 特に、aがネイピア数であるとき、つまりa=eのときには、 f'(x) = \{ e^x \}' = e^x となる。 e^xの導関数はその関数e^x自身となるということである。
対数関数の微分
指数関数の逆関数である、対数関数 f(x) = \log x の導関数は、 f'(x) = \frac{1}{x} として与えられる。
f(x) = \log_a xの微分
底がaである対数関数f(x) = \log_a xの微分は、 f'(x) = \frac{1}{x \log a} となる。これは、{底の変換公式} \log_a x = \frac{\log x}{\log a} を用いて微分を行えば導き出せる。
微分の公式
\begin{aligned} x^a &= ax^{a-1} \\ \{ f(x) + f(y) \}' &= f'(x) + f'(y) \\ f'(\lambda x) &= \lambda f'(x) \\ \{ f(g(x)) \}' &= g'(x) f'(g(x)) \\ \{ f(x)g(x) \}' &= f'(x) g(x) + f(x) g'(x) \\ \left( \frac{f(x)}{g(x)} \right)' &= \frac{f'(x) g(x) - f(x) g'(x)}{\{g(x)\}^2} \\ \{ a^x \}' &= a^x \log a \\ \{ e^x \}' &= e^x \\ \{ \log x \}' = \frac{1}{x} \end{aligned}
2階微分
関数f(x)の導関数f'(x)をさらにもう一回微分したものを、2階導関数と呼び、 f''(x), \hspace{12pt} \frac{d^2 f(x)}{dx^2}, \hspace{12pt} \frac{d^2}{dx^2} f(x), \hspace{12pt} f^{(2)}(x) などのように表す。
- ここのdx^2は、(dx)^2の意味で用いられているが、表記の簡単化のために括弧が省略されている。
n階導関数
関数f(x)をn階連続で微分したn階導関数は、 f^{(n)}(x) \hspace{12pt} \frac{d^n f(x)}{dx^n}, \hspace{12pt} \frac{d^n}{dx^n} f(x) と表記される。
2回以上微分を行うものを、高階微分などと呼ぶ。
関数の増減
いま、関数f(x)の導関数f'(x)は、xでの接線の傾きだった。 ゆえに、 \begin{aligned} (a)~ f'(x) &> 0 \Longrightarrow f(x)\text{は増加している。} \\ (b)~ f'(x) &= 0 \Longrightarrow f(x)\text{は増加も減少もしていない。} \\ (c)~f'(x) &< 0 \Longrightarrow f(x)\text{は減少している。} \end{aligned} ということが言える。
(a)のときf(x)は増加関数。 (c)のときf(x)は減少関数。
単調増加と単調減少
ある区間においてf'(x)が常に正であるとき、その区間においてf(x)は単調増加という。
同様に、ある区間においてf'(x)が常に負であるとき、その区間においてf(x)は単調減少という。
極値
関数f(x)の導関数f'(x)がちょうどゼロで、その前後でf'(x)の符号が変わるとき、f(x)は極値を取るという。
補足
f'(x)がゼロでも、その前後でf'(x)の符号が変わらない場合、その点におけるf(x)は極値ではないことに注意せよ。
- 上に凸となっている極値は極大値
- 下に凸となっている極値は極小値
極値判定は、
- グラフを描く。
- f''(x)のの正負を見る。
2階導関数の条件(二階の条件)
\begin{align*} \left\{ \begin{aligned} f'(x_0) &= 0 \\ f''(x_0) &< 0 \end{aligned} \right. \Longrightarrow \text{$f(x)$は$x=x_0$で極大値$f(x_0)$をとる。} \\ \left\{ \begin{aligned} f'(x_1) &= 0 \\ f''(x_1) &> 0 \end{aligned} \right. \Longrightarrow \text{$f(x)$は$x=x_1$で極小値$f(x_1)$をとる。} \end{align*}
極値に関する注意
「極大だから最大」あるいは「極小だから最小」とはならないことに注意せよ。
逆もまた然りで、「最小だから極小」、「最大だから極大」ともならない。
関数の微分の値について、 f''(x_0) = 0 となるとき、(x_0,f(x_0))は変曲点といわれる。
関数は
- f''(x)<0のとき上に凸の形状
- f''(x)>0のとき下に凸の形状
変曲点はちょうど上に凸と下に凸が変わる点を表している。
多変数関数の微分
多変数関数についても微分を行うことができる。 変数としてx,yを持つ2変数関数 f(x,y) が与えられたとする。
これをxについて微分するとき、もう一つの変数yについては固定されているものと考えて微分を行うことを、偏微分という。
いま、f(x,y)をxについて偏微分したものを、 \frac{\partial f(x,y)}{\partial x},\hspace{12pt} \frac{\partial}{\partial x} f(x,y),\hspace{12pt} f_x(x,y) などと書く。
偏微分の例
例えば、関数f(x,y)=x^2 + 2 x y +y^3をxについて偏微分すると、 \frac{\partial f(x,y)}{\partial x} = 2 x + 2 y となる。 また、yについて偏微分すると、 \frac{\partial f(x,y)}{\partial y} = 2 x + 3 y^2 と計算することができる。
これは変数が2変数についての場合のみではなく、一般に何変数の関数でも偏微分は可能である。
テイラー展開
関数には次のような非常に不思議な性質がある。 \begin{aligned} f(x) &= f(x_0) + \frac{f'(x_0)}{1} (x - x_0) + \frac{f''(x_0)}{1 \cdot 2} (x-x_0)^2 + \cdots \\ &= \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)} (x_0)}{n!} (x-x_0)^n, \end{aligned} \label{eq:taylor} これを、x=x_0まわりの{テイラー展開}と呼ぶ。
ちなみに、“!”は階乗という演算子で、 \begin{aligned} n! &\equiv 1 \times 2 \times \cdots \times (n-1) \times n, \\ 0! &\equiv 1, \end{aligned} と定義されている。
テイラー展開の例
いま、適当に定めた関数 f(x) = x^5 - 5x^4 - 9x^2 - 12x + e^{1.2x} をx=3においてテイラー展開する。
第N項までで近似をするとしよう: f(x) \approx \sum_{n=0}^{N} \frac{f^{(n)} (x_0)}{n!} (x-x_0)^n
関数の一次近似
さて、テイラー展開による近似においてN=1で近似を行うと、 f(x) \approx f(x_0) + f'(x_0) (x - x_0) となる。 これを、関数の一次近似という。
- x=x_0から離れるほど、f(x)とのかい離は大きくなってゆく。
- x=x_0と非常に近い場所については、f(x)とのかい離はほとんどない。
微分可能な関数
関数がある区間で連続かつなめらかであるとき、その関数はその区間で微分可能という。
ある区間(あるいは点)で関数が連続であるとは、直観的には関数がその区間(点)において途切れずにつながっていることを意味する。
対して、ある点において関数が不連続であるとは、ある点において関数がジャンプすることを意味している。
例えば、次の関数fはx=0において不連続である。 f(x) = \left\{ \begin{aligned} &1 &(x<0) \\ &x &(x \ge 0) \end{aligned}\right. 関数が連続でない点では微分ができない。
関数がある点においてなめらかであるとは、直観的には関数がその点において角ばっていない、あるいはとがっていないことを意味する。
次の関数はx=0においてなめらかでない関数fである。 f(x) = |x| なめらかでない点では微分ができない。
2 積分
積分のアイデア
今、適当な関数y=f(x)を考えて、(x,y)平面にプロットする。
今、関数f(x)のなかのある区間a \le x \le bを取り、次の図bに示されるような領域の面積を求めたいとしよう。 ひとまず大まかに面積を近似することを考よう。
区分による近似
aからbまでの区間を5つに区切ると、この時、面積は5つの長方形の和として表される。
各長方形の横の長さは、 \frac{a-b}{5} \equiv \Delta x となっている。 そして、各長方形の縦の長さは、 f(x_1), f(x_2), f(x_3), f(x_4), f(x_5), なので、求めたい面積の近似値は、 \sum_{n=1}^{5} f(x_n) \Delta x とすることができる。
区分を増やす
aからbまでの区間をより細かく分割してみよう。
分割を増やすほど、もともと求めたかった面積との誤差も小さくなっていく。
分割を非常に多くする場合には、求めたい面積と等しくなるとみなすことができるはず。
面積の近似へ
区間aからbをN分割するとすれば、面積は \sum_{n=1}^N f(x_n) \Delta x で近似できるので、分割が非常に多いときはN \to \inftyとすればよい。
- N \to \inftyのとき、分割された1区間の横の長さ\Delta xは非常に小さくなる。
- この時は1区間の横の長さをdxと表記する。
積分を定義する
関数f(x)の区間aからbにおける積分を \int_a^b f(x) dx \equiv \lim_{N \to \infty} \sum_{n=1}^N f(x_n) \Delta x と定義する。
定義からもわかる通り、積分は関数(とその変数の軸)がつくる領域の面積であると理解することができる。
区間の指定がある積分を定積分と呼ぶ。
積分区間の分割
積分については、区間の分割ができる。
aからbまでの区間に適当なcを取ると、 \int_a^b f(x) dx = \int_a^c f(x) dx + \int_c^b f(x) dx であることがわかる。
計算するうえでは、適当な部分で積分しやすいように句切ることが許されている。
原始関数
積分は、微分の逆の演算になっている。 ある関数F(x)を考えて、その関数を微分したものを、f(x)であるとしよう。 つまり、 \frac{d F(x)}{dx} = f(x) となっている。 この時のF(x)をf(x)の原始関数と呼ぶ。 具体的な計算でこの関係性を追ってみよう。
最も単純な原子関数を微分する
今、原始関数として、 F(x) = x^2 という関数を考えてみよう。
これをxで微分してf(x)を求めると、 f(x) = \frac{d F(x)}{dx} = 2x である。 つまり、f(x) = 2 xの原始関数の一つは F(x) = x^2 である。
無数の原始関数
定数Cを用いて、 G(x) = F(x) + C = x^2 + C を新たに定義しよう。
実はG(x)をxで微分すれば、 \frac{d G(x)}{dx} = 2x =f(x) なので、G(x)もf(x)の原始関数の一つ。
- 定数部分(C)は、どんな数も入りうる。
- ゆえにf(x)の原始関数G(x)は無数に存在する。
不定積分
最も簡単な原子関数は、定数項がない次の形。 F(x) = x^2 これをベースに、積分を次のように定義する。 \begin{aligned} \int f(x) dx = \int 2x dx &= x^2 + C = F(x) + C \nonumber \\ \Longleftrightarrow \int f(x) dx &= F(x) + C \end{aligned} 今、この積分区間は定まっていない。
- このような積分を不定積分とよび、定数Cを積分定数と呼ぶ。
- 不定積分には積分定数Cが必ずついてくることに注意せよ。
積分の公式
積分は微分の逆の演算であるため、積分の計算においては微分の公式の逆を使えばよい。
ここでは、以下に示すのみに留める。
- x^aの積分
-
\int x^a dx = \frac{1}{a+1} x^{a+1} + C
- 指数関数e^xの積分
-
\int e^x dx = e^x + C
- \frac{1}{x}の積分
-
\int f(x) dx = \int \frac{1}{x} dx = \log x + C
- \frac{g'(x)}{g(x)}の積分
-
\int \frac{g'(x)}{g(x)} dx = \log [g(x)] + C
積分の線形性
微分と同様に、積分の計算にも線形性が成り立つ。
つまり、ある実数\lambdaおよび、関数f(x),g(x)について \begin{align*} \int \lambda f(x) dx &= \lambda \int f(x) dx \\ \int [f(x) + g(x)] dx &= \int f(x) dx + \int g(x) dx \end{align*} が成立する。
これは後に出てくる定積分においても成立する。
定積分
積分区間が決まっていない不定積分に対して、積分区間が定まっているものが定積分である。 原始関数がF(x)である関数f(x)のa \le x \le bにおける定積分は、 \int_a^b f(x) dx と表される。
定積分の値を求めるためにはf(x)の原始関数F(x)を用いて、 \int_a^b f(x) dx = [F(b) + C] - [F(a) + C] = F(b) - F(a) と計算できる。
- f(x)の原始関数のうち、定数項のないものF(x)を計算する、
- F(x)にx=a,bを代入し、F(b)-F(a)を計算する。
定積分では積分定数Cがちょうど消える。
微積分学の基本定理
a,b>0を定数、F(x)を関数f(x)の原始関数とする。 このとき、次の法則を微積分学の基本定理という。
広義積分
積分区間は実数のみではなく、\inftyや-\inftyを取ることもできる。
このような\pm \inftyを積分区間に含むような積分を、広義積分と呼ぶ。
広義積分では、積分値が有限値を取る場合と、発散する場合が存在する。
広義積分の例
\int_0^{\infty} e^{-x} dx は広義積分の一つである。 これは、次のように計算できる。 \begin{aligned} \int_0^{\infty} e^{-x} dx &= \int_{0}^{\infty} [- e^{-x}]' dx \\ &= [- e^{-x}]_{0}^{\infty} \\ &= [ - \lim_{x \to \infty} e^{-x} + e^{0}] \\ &= 1 \end{aligned}
部分積分
積の微分法 \frac{d}{dx} \{f(x)g(x)\} = f'(x) g(x) + f(x) g'(x) の両辺を積分して整理すると、 \int f'(x) g(x) dx = f(x) g(x) - \int f(x) g'(x) dx という関係式が得られる。 これを部分積分の公式という。
- 定積分、不定積分の両方に適用できる。
部分積分の例
例えば、対数関数f(x) = \log xの1 \le x \le e区間における積分値を計算してみよう。 \begin{aligned} \int_1^e \log x dx &= \int_1^e \left\{ x \right\}' \log x dx\\ &= \left[ x \log x \right]_1^e - \int_1^e x \{ \log x \}' dx \\ &= [e \log e - 1 \log 1] - \int_1^e x \left( \frac{1}{x} \right) dx \\ &= e - \int_1^e (1) dx \\ &= e - \left[ x \right]_1^e \\ &= e - [ e - 1] \\ &= 1 \end{aligned}
置換積分
積分おいては、変数の置きかえをすることができる。 \int f(x) dx を計算したいとしよう。 x = g(y)と置き換えられるとき、 \frac{dx}{dy} = \frac{dg(y)}{dy} なので、 dx = \frac{dg(y)}{dy} \cdot dy
これを用いて置き換えをすれば、 \int f(x) dx = \int \left[ f(g(y)) \frac{dg(y)}{dy} \right] dy として、yについての積分をxについての積分として書きかえることができる。
このように変数を置き換えて積分する方法を置換積分という。
置換積分の例
関数z(x) = 2x (x^2 + 6)を不定積分する。 \int z(x) dx = \int 2 x (x^2 + 6) dx 今、x^2+6 = yと置く。すると、 \begin{aligned} \int z(x) dx &= \int 2 x (x^2 + 6) dx \\ &= \int 2x y dx \end{aligned} ここで、 \frac{dy}{dx} = 2x なので、 \begin{aligned} \int z(x) dx &= \int 2x y dx \\ &= \int y \frac{dy}{dx} dx \\ &= \int y dy \\ &= \frac{1}{2} y^2 +C \\ &= \frac{1}{2} (x^2 + 6)^2 +C \hspace{12pt} \because y = (x^2 + 6) \end{aligned} と、計算できた。 これをxで微分すればz(x)が導出できることを確認できる。
定積分の場合は変数を置き換えたときに積分区間も置きかえる必要がある。
関数z(x) = 2x (x^2 + 6)を0 \le x \le 10区間で定積分する。
\int z(x) dx = \int 2 x (x^2 + 6) dx 今、x^2+6 = yと置く。すると、 \begin{aligned} \int z(x) dx &= \int 2 x (x^2 + 6) dx \\ &= \int 2x y dx \end{aligned} ここで、 \frac{dy}{dx} = 2x なので、
いま、積分区間をdxからdyに置き換える際に、y = (x^2 + 6)を用いて、0 \le x \le 10の間でyが取る値を計算する必要がある。
これはyの式にxの区間を代入すれば求めることができるので、 \begin{aligned} 0^2 + 6 &= 6 \\ 10^2 + 6 &= 106, \end{aligned} したがって、 6 \le y \le 106
置きかえに注意して計算をすると、 \begin{aligned} \int_0^{10} z(x) dx &= \int_{0}^{10} 2x y dx \\ &= \int_6^{106} y \frac{dy}{dx} dx \hspace{12pt} (\text{ここで区間を置きかえ}) \\ &= \int_{6}^{106} y dy \\ &= \left[ \frac{1}{2} y^2 \right]_6^{106} \\ &= \frac{1}{2} [106^2 - 6^2] \\ &= \frac{1}{2} [11236^2 - 36^2] \\ &= \frac{11200}{2} \\ &= 5600 \end{aligned}
置換積分を用いないで計算する場合、 \begin{aligned} \int_0^{10} 2x (x^2 +6) dx &= \int_0^{10} 2x (x^2 +6) dx \\ &= \int_0^{10} (2 x^3 + 12 x) dx \\ &= \left[ 2 \left(\frac{1}{4} x^4\right) + 12 \left( \frac{1}{2} x^2 \right) \right]_0^{10} \\ &= \left[ \frac{1}{2} x^4 + 6 x^2 \right]_0^{10} \\ &= \frac{1}{2} (10)^4 + 6 (10)^2 \\ &= 5600 \end{aligned} となり、当然解答は一致する。