上級マクロ経済学II

第2回 ソローモデルと収束

Author

荻巣嘉高

1 ソローモデル

ソローモデルの概要

  • 上級マクロ経済学Iでやっている(はず)

  • 経済成長理論

    • ソローモデル
    • AKモデル
    • ラムゼイモデル
  • 家計と企業が存在.

    • プレーンなモデルでは政府はなし.
  • この講義では,離散時間で考えます.

家計

  • 無限期間生存.
  • 所得のsだけの割合を貯蓄.
  • 非弾力的に労働供給を行う.
    • 労働力はL_t
  • 資本を保有しており,企業に貸し出す.
    • 資本(または資本ストック)はK_t

企業

  • 家計から労働,資本を借りて一般財を生産.
    • 生産量はY_t
    • 一般財:消費も貯蓄もできて,投資すると資本としても使える財.
  • 生産関数はF(K_t, L_t)で表され,規模に関して収穫一定.
    • 規模に関して収穫一定Fが一次同次関数.
    • Fは生産技術(technology)とか言われることもある.
    • L_tK_tについて増加関数ただし2階微分は負.
  • 労働1単位あたりにw_tだけの賃金を支払う.
  • 資本1単位あたりにr_tだけの利子を支払う.

家計の行動

  • 家計は所得のうちsだけ貯蓄するので,貯蓄をS_tとすると, S_t = s Y_t

  • 消費C_t \begin{aligned} C_t = (1-s) Y_t \end{aligned}

企業の行動

  • 代表的企業は生産関数Fのもとで,資本K_t単位と労働L_t単位を使い,Y_t単位の財を生産する. Y_t = F(K_t, L_t)

  • 毎期I_tだけ投資.

    • 投資:生産のための資本財を購入すること.
  • 資本は毎期,\deltaの割合で減耗.

    • \delta:資本減耗率. 次期の資本を決める,資本の蓄積方程式は. K_{t+1} = I_t + K_t - \delta K_t あるいは,\Delta K_t \equiv K_{t+1} - K_tを使って, \Delta K_{t} = I_t - \delta K_t

市場均衡

I_t = S_t であるとき,市場が均衡(財市場の均衡).

  • ソローモデルでは均衡を常に分析.
    • ちなみに,資本市場と労働市場も均衡していることを暗に仮定している.
    • あるいは,資本市場,労働市場は存在せず,家計が企業を保有していると仮定しても良い.

S_t = sY_t=sF(K_t,L_t)であることを使えば,資本の蓄積方程式は次のように書き換えられる. K_{t+1} = sY_t + K_t - \delta K_t ~ \Longleftrightarrow ~ \Delta K_t = sY_t - \delta K_t あるいは, K_{t+1} = sF(K_t, L_t) + K_t - \delta K_t ~ \Longleftrightarrow ~ \Delta K_{t} = sF(K_t, L_t) - \delta K_t

経済変数の動態

\begin{aligned} K_{t+1} &= sF(K_t, L_t) + K_t - \delta K_t \\ L_{t+1} &= (1+n) L_t \end{aligned}

  • n:人口成長率.

初期時点の資本K_0>0と労働L_0>0が与えられれば,モデルは閉じる.

  • K_tL_tの動態に沿って,Y_t=(K_t, L_t)も動いていく.
  • 2変数の差分方程式.
    • 一次同次の生産関数の性質を使えば,1変数の差分方程式にできる.
      • 分析で簡単に取り扱える.

一人当たり資本・生産

k_t \equiv K_t/ L_t:一人当たり資本

y_t\equiv Y_t/ L_t = F(k,1) \equiv f(k_t):一人当たり生産/一人当たり所得

k_{t+1} = \frac{sf(k_t) + (1 - \delta) k_t}{1+n} あるいは,\Delta k_t \equiv k_{t+1} - k_tを使って, \Delta k_t = \frac{sf(k_t) - (\delta + n)k_t}{1+n} 動学方程式は,k_tのみの1変数差分方程式になった.

一人当たり変数の動態

\Delta k_t = \frac{sf(k_t) - (\delta + n)k_t}{1+n}

Note
  • \Delta k_t >0:
    • k_{t+1} > k_{t}なので,今期から次期にかけて,資本が成長.
  • \Delta k_t <0:
    • k_{t+1} < k_{t}なので,今期から次期にかけて,資本が減少.
  • \Delta k_t =0:
    • k_{t+1} = k_{t}なので,今期から次期にかけて,資本は不変.
    • このとき,経済が定常状態にある.
  • 1+n >0なので,sf(k_t) - (\delta + n)k_tの符号がわかれば良い.

一人当たり成長率

一人当たり資本の成長率をg_k,一人当たりGDPの成長率をg_yとすると, \begin{aligned} g_k &= \frac{\Delta k_t}{k_t} \\ g_k &= \frac{\Delta y_t}{y_t} = \frac{y_{t+1} - y_t}{y_t} = \frac{f(k_{t+1}) - f(k_t)}{f(k_t)} \\ \end{aligned}

定常状態を描写

定常状態は k_t = k_{t+1} = k^\ast のとき.

そのときは, s f(k^\ast) = (\delta + n) k^\ast

コブ・ダグラス型生産関数

F(K_t, L_t) = A K_t^{\alpha} L_t^{1-\alpha}, ~ (0<\alpha<1) を仮定して今後は議論.

  • A:全要素生産性(Total Factor Productivity, TFP)
  • \alpha: 資本の弾力性パラメーター,あるいは,資本分配率.

一人当たり生産は, f(k_t) = A k_t^{\alpha}

定常状態のk^{\ast}は, k^{\ast} = \left( \frac{sA}{\delta + n} \right)^{\frac{1}{1-\alpha}}

一人当たり資本の成長率と定常状態

一人当たり資本の成長率は, \begin{aligned} g_k &= \frac{sAk_t^{\alpha} - (\delta + n)k_t}{(1+n)k_t} \end{aligned}

  • 定常状態\Delta k_t = 0であれば,当然g_k = \Delta k_t / k_t = 0

一人当たり所得の成長率と定常状態

一人当たりの成長率は, \begin{aligned} g_y &= \frac{k_{t+1}^{\alpha} - k_{t}^{\alpha}}{k_t^{\alpha}} \\ &= \left( \frac{k_{t+1}}{k_t} \right)^{\alpha} - 1 \\ &= (1+g_k)^{\alpha} - 1 \\ &= \left[ \frac{sAk_t^{\alpha} +(1-\delta)k_t}{(1+n)k_t} \right]^{\alpha} - 1 \end{aligned}

  • 定常状態\Delta k_t = 0であればg_k= 0なので,g_y=0

経済成長への含意(ソローモデル)

絶対的収束
  • ソローモデルは,定常状態において,k_tの成長率はゼロ.
    • それに伴いy_tの成長率もゼロ.
  • 定常状態は一意(ひとつだけ).
    • どんなk_tからスタートしても,最終的に辿り着くk^{\ast}は同じ.
  • 定常状態から離れている経済ほど,成長率が高い.
    • 発展途上国のキャッチアップ.

実証的な観測

一人当たりの所得水準を

  • low(0 - 10,000 US$)
  • middle(10,000 - 20,000 US$)
  • high (20,000 - US$)

で色分けしてプロット

  • 低所得から高所得へスムーズに推移していく成長経路に見えるか?

サブサンプル

定常状態の予測値(\hat{k}^{\ast}

Brazil France Japan US
127.4 375.8 229.1 480.7
  • どうやらたどり着く先は異なりそう.
  • 収束までのスピードも違いそう.

成長への含意を修正

条件付き収束
  • ソローモデルは,定常状態において,k_tの成長率はゼロ.
    • それに伴いy_tの成長率もゼロ.
  • 定常状態はあるパラメータセットに対して一意(ひとつだけ).
    • どんなk_tからスタートしても,同じパラメータセットを持つ国なら最終的に辿り着くk^{\ast}は同じ.
  • 定常状態から離れている経済ほど,成長率が高い.
    • 発展途上国のキャッチアップ.

ソローモデルのパラメータ変化

  • sの変化でg_y曲線がシフト.
    • 定常状態のk^{\ast}の値が変化.
  • その他のパラメータA\alphaなどの変化がどのような変化をもたらす?